バスは釣られたルアーのことを覚えているのか?

2020年1月10日

バスは釣られたルアーのことを覚えているのか?

バスには学習能力があるというのはよく聞く話ですが、果たして本当にバスには学習能力があるのでしょうか?あるとしたらそれは、どの程度なのでしょうか?ちょっと調べてみました。

こんにちは!店長の小山です!

本日は海外サイトより、”Ponder this: Do bass remember your lures?”という記事を引用してご紹介いたします。

引用先:outdoornews.com ”Ponder this: Do bass remember your lures?”by Ralph Loos February 6, 2014

皆さんには、思い出のルアーというものがありますでしょうか。

バスのルアー釣りをしていると、エサ釣りでは味わえない体験がひとつありまして、それは、「釣ったエサがそのまま残る」ということです。

これが何を意味するかと言えば、残ったエサがそのまま思い出にも残るということですよね。この場合はルアーですから、正確に言えば疑似餌ですけども。

釣りの思い出とともに思い出のルアーが残る。その思い出が増えるのが嬉しくて、また違うルアーで釣りたくなる。これが、バス釣りといいますかルアー釣りの良い部分のひとつと言えると思います。予算的なことを考えると、正反対の悪魔のような部分と言い換えることもできます(笑)

さて、人間としては思い出のルアーなのですが、バスにとっては苦い経験です。

バスとしてはできれば釣られてしまったことを反省し、2度と同じ過ちを繰り返したくはないでしょう。

私たち人間の感覚で感情移入するとしたらこうなります。しかし実際のところ、バスの頭の中はどうなっているのでしょうか。

実はこの疑問、先日SIMOSAKANAさんという方のブログを拝見していまして、そこでとりあげられていたテーマなんです。

ここでは「人間も魚もDHA(ドコサヘキサエン酸)を摂取すると頭がよくなるらしいので、ベイトフィッシュを食べているバスは天才君になりやすいのではないか」という、とても面白い発想を見ることができました。

またSIMOSAKANAさんのブログではこの記事が2019年に最も読まれたランキング6位だったそうで、私も含め皆さん興味ある内容だったのだと共感でき、嬉しく思いました。

ちなみについ先日、たまたまですが私もバスの記憶について少しだけ触れていました。

これはフックの傷についてのことですが、今回気になるのはルアーそのものへの記憶のことです。実際、どうなのでしょうか。

シモサカナさんのブログではそれについての参考文献などには触れられておりませんでしたので、勝手にですがお礼の意味も含め、興味がわいたので調べてみることにしたという感じです。

次の記事は、アメリカの北米エリアを中心としたアウトドアの総合情報ニュースサイト「OUTDOOR NEWS」の記事で、編集者のラルフ・ロース氏が、バスの記憶力について調べ、掲載されたものです。

本格的な論文を私が直接訳したものではなく、論文を読んだ方の記事を訳したものですが、非常に興味深い内容だと思います。

ぜひ読んでみてください。

バスはルアーを覚えているのか?

引用文:タップすると開きます
Edwardsville, Ill. — For years, bass anglers have sat in bass boats and pondered bass questions, such as: Can bass identify lures that previously led them to be hooked?

That is, do bass remember?

One scientist who has tried to answer that question says he thinks bass can remember lures – maybe for up to three months or longer.

To be sure, that’s not the answer bass anglers around Illinois were counting on.

“You always wonder, especially when bass aren’t biting, if they are down there thinking to themselves ‘I can’t believe this guy is trying this purple piggy boat again,’” Don Holland, a Madison County angler who fishes Carlyle Lake and Lake Lou Yaeger, offered.

Perhaps. But studies by Keith Jones, director of research at the Berkley Fish Research Center, suggests that largemouth bass are “conditioned” in various ways. Along with memory research, Jones took a look at whether a fish becomes conditioned to avoid certain lures they might see swimming by over and over.

“There are certainly trends on the bass tours that would seem to suggest that,” Jones said of his study. “For example, spinnerbaits, once a dominant presentation for top pros, seem a useless bait today.

Swimbaits, frogs and other newer trends have replaced old lures.”

Jones, widely regarded as one of the world’s foremost bass experts, writes about that in his book “Knowing Bass: The Scientific Approach To Catching More Fish.”

イリノイ州エドワーズビル — 長年、バスアングラーはバスボートに乗り、バスに対して次のような疑問を持っていました。

バスは以前釣られたルアーを判別することはできるだろうか?

つまり、記憶力はあるのだろうか?ということです。

その質問に一人の科学者が出した答えは、バスはルアーを覚えることができます。おそらく最大で3か月以上でしょう。とのことです。

これは、バスアングラーが欲しかった答えではないでしょうね。

「特にバスのバイトがないと、「この紫色のボートは前に俺を釣ったやつだから気を付けないとな」とバスが心の中で考えているんじゃないかと思ってしまうよね。」とカーライル湖やルーヤイガー湖で釣りをするマディソン郡のアングラー、ドン・ホランドは言います。

もしかしたら…さあ、どうなんでしょう。しかし、バークレイ・フィッシュリサーチセンターの研究部長であるキース・ジョーンズの研究では、ラージマウスバスがさまざまな方法で「適応」していることを示唆しています。ジョーンズは記憶の研究に加えて、バスがこれまで何度も見てきたであろう特定のルアーを避ける傾向があるかどうかも調べました。

「バスの生態には確かにそれを示すような傾向があります。」とジョーンズは研究結果について語りました。 「たとえば、かつてトッププロの世界でずっと釣れ続けていたスピナーベイトは、今日ではそれほど釣れるルアーではなくなっています。スイムベイト、フロッグ、その他の新しい流行のルアーが古いルアーに取って代わりました。」

世界有数のバスの専門家の一人として広く知られているジョーンズは、彼の著書「Knowing Bass:The Scientific Approach to Catching More Fish」で次のように書いています。

バスの4つの種類の記憶力

引用文:タップすると開きます
According to Jones, the four main methods of learning are associated learning, habitation, spatial and prey images.

He says to think of associated learning as “trial-and-error” learning.

“The fact that bass are capable of associative learning is proven by laboratory experiments where the animal is taught to link two types of stimuli, such as a certain colored light with an ensuing electric shock,”

Jones writes. “Bass readily learn these associations, both in the lab and in the field, although not as fast as some other species.”

Spatial learning involves bass learning to move around their environments, recognize landmarks or objects and stake out their territories. According to Jones, bass in his studies have been able to find their way through an underwater maze to reach a desired point.

Habituation learning involves bass gradually becoming less sensitive to specific stimulations. Jones says examples of this learning would include fish in an aquarium that no longer shy from people who walk by, or bass that learn to ignore boat traffic on a busy lake.

The fourth type of bass learning, prey images, is the ability to develop and recognize a shad or crawfish as prey.

“Given enough positive experience with a certain prey type, a bass will gradually come to actively seek out that specific prey,” Jones noted. “Prey species, for their part, often counter the bass’ efforts by changing their signature stimuli, often through the use of camouflage.”

Like humans, bass are capable of different types of learning, but individual bass learn at different rates.

Jones even cited a four-year study by the University of Illinois that documented recapture rates of largemouth bass. The average bass was caught twice each season, but some bass were caught up to 16 times in a single season.

ジョーンズによると、4つの記憶という主なものには、関連学習、習慣、空間、エサのイメージです。

彼は、関連学習のことを「試行錯誤」の学習とも言えると言います。

「バスに関連学習が可能であるという事実は、特定の色の光を当ててそれに続けて電気ショックを与えてみるなど、2種類の刺激を関連付けるように動物に植え付ける実験室内での実験によって証明されています」

ジョーンズはこうも書いています。 「他の種ほど速くはありませんが、バスは実験室と自然環境の両方でこういった関連性をちゃんと学習しています。」

空間の学習とは、周囲を動き回り、何かの目印になるものや物を認識し、そのエリアにナワバリとして留まろうとバスは学習するということです。ジョーンズによると、彼の研究したバスは、水中の迷路を通り抜けて自分のお気に入りの目的地に到達することができたということです。

習慣の学習とは、特定の刺激に対するバスの感度が徐々に低下することを指します。ジョーンズは、この学習の例として、近くを人間が歩いても警戒しなくなる水族館の魚や、メジャーフィールドの湖上を走る多くのバスボートの多さが気にならなくなることを学ぶバスがいることだと言います。

4番目のバスの学習であるエサのイメージとは、シャッド(ベイトフィッシュ)やザリガニを獲物として覚え、認識する能力のことです。

「何か決まったエサをよく食べるようになることで、バスは徐々にその特定のエサを積極的に探すようになるでしょう。」とジョーンズは指摘します。 「エサとされる種は多くの場合、周囲に溶け込むようなカモフラージュを使用することで、バスに対する刺激を抑え、バスの食欲を刺激しないようにします。」

このように、バスは人間と同じようにさまざまなタイプの学習が可能ですが、バスの個体により学習速度は異なるようです。

ジョーンズは、イリノイ大学での4年間、ラージマウスバスの再捕獲率を記録した研究を引用していましす。平均的なバスは毎シーズンにつき2回釣られていたようですたが、一部のバスについては1つのシーズンで最大16回も釣られたということです。

バスがルアーを覚えている期間

引用文:タップすると開きます
Holland isn’t so sure about the memory theory. Or maybe it’s wishful thinking on his part – an angler with a strong hope that bass really can’t remember lures. Illinois bass anglers tend to latch on to a favorite lure and use it over and over, Holland said.

But Jones meticulously tested bass memory for lures, and his study suggests that indeed, bass do remember.

In the study, bass were allowed to strike a minnow lure for a five-minute test period. In the beginning, most strikes came in the first one to three minutes. By the end of the five-minute period, the bass had learned to ignore the lure because it provided no positive reward – meaning there was no food to be had by striking the lure. The bass were then divided into two groups, with no additional testing, for different lengths of time.

After two weeks, the bass in one group were re-exposed to the same lure, again for five minutes. The response of those bass was about one-tenth of what it was in the initial exposure. According to Jones, that indicated that the bass had retained a strong memory of the lure during the two-week interval. And it was a negative memory.

After two months, the second group of bass still tested below the original response level.

“The results show that under some circumstances, bass can remember lures for at least up to three months and perhaps much, much longer,” Jones concluded.

アングラーのドン・ホランドはこの記憶の理論についてそれほど信じていません。ただそれは、彼の希望的観測でもあるのでしょう。彼はアングラーとして、バスは本当はルアーのことなんて思い出せるわけがないんだ、そうであってほしいという強い願望があるのです。実際、イリノイ州のバスアングラーであるホランドは、バスがお気に入りのルアーを何度も食ってくる傾向があると言います。

しかし、ジョーンズはバスのルアーへの記憶について綿密にテストしています。彼の研究によると、バスは確かにルアーを覚えていることを示唆しています。

この研究では、バスは5分間のテスト時間内にミノールアーに何度食ってくるかを観察しました。まず、ほとんどのバイトは最初の1〜3分以内に発生しました。 5分間という時間が終わるころには、バスはルアーを無視することを学びました。なぜなら、それにはポジティブな理由がなかったからです。つまり、ルアーを食べることによって空腹が満たされなかったからです。そこでひとまずテストはやめ、バスはその後2つのグループに分けられました。

2週間後、1つのグループのバスに対して再び同じルアーで5分間のテストをしました。そのときのバスの反応は、最初の実験時の約1/10でした。ジョーンズによると、これは2週間の間、バスがルアーのことを強く覚えていたことを示しているということです。言わば、ネガティブな記憶です。

2つ目のグループには2ヵ月後、同じ内容のテストがされましたが、ここでも最初のテストの反応を下回りました。

「結果を見る限り、状況にもよりますが、バスは少なくとも最大3か月間、おそらくはそれよりも長い間、ルアーを記憶できることを示しています」とジョーンズは結論付けました。


ネガティブな記憶、人間でいうところのトラウマという感じでしょうか。

バスフィッシングにはキャッチアンドリリースという文化があるため、強いトラウマに対して食べられる魚よりも記憶が遺伝的に残りやすいということも言えるのでしょうか。

しかし3か月もの間、ルアーを覚えているというのは、ちょっと長いですよね。もっと早く忘れてほしいものですね。

トラウトの管理釣り場なんかだと非常にわかりやすいもので、その日の当たりルアーを見つけると連続ヒットでウハウハなんていうことになるのですが、早ければ10分くらいでそのフィーバーが終わってしまうこともありますよね。

あれは何なのでしょうね。飽きるのでしょうか。やはり怪しいと思うのでしょうか。

魚種は違いますが、バスにも同じようなことが起きているような気はします。

ついでに、もうひとつ文献を調べてみました。(PDFファイルが開きます)

Quick learning, quick capture: largemouth bass that rapidly learn
an association task are more likely to be captured
by recreational anglers

この論文もまたイリノイ大学の研究チームによって書かれたものだと思うのですが、内容があまりに長文ですのでざっと流し読みした感じで端折って書いてみますと、

  1. 60匹のバスを捕まえて水槽に入れ、4日間にわたりバスに対して光を当てた後に網で追いかけて捕獲しようとする実験をした。(関連学習の早さを見た)
  2. それに加え、捕まえられたバスが網からジャンプして逃げ出すかどうかも観察した(学習の早さとアグレッシブさを見た)
  3. 網で捕まえられなかったバスと網からジャンプして逃げ出したバス、それと捕まったバスの2つのグループに分けた。
  4. それぞれのバスを池に放して、ルアーで数日間にわたって釣りをした。

この結果、網で捕まえられなかったバスと網から逃げ出したバスの方がルアーで釣りやすかったという結果になったようです。

学習の早いバスや網から逃げ出すようなアグレッシブなバスほど、ルアーに反応しやすく、釣られてから危険だと学ぶ傾向があるようです。この特性はバスにとってある場面では有利に働くのでしょうが、アングラーに対する釣られやすさという面では弱い特性となりました。

逆にやる気がなく網で捕らえられてしまったようなバスは、学習のスピードが遅い半面、ルアーに対しても積極性がなく、好奇心も少ないようで、人間と接する機会が少ないという点においては、覚えが悪くても釣られにくいと結論付けられています。

バスの種類による差があるかどうかについては分かっていないようです。

多分ですけど、こんな感じに書かれていると思います(間違っていましたら大変申し訳ありません)。

かなり長い論文でしたが、私としましては結論を見る限り、「見えバスを釣る時の反応そのまんまだなあ」と思いました。

ルアーで釣りやすいやつは反応しやすいがスレやすく、反応しないやつは物覚えは悪いけどそもそもやる気もない。ということですよね。

うーん、何とも言えない結論ではありませんか。私たちアングラーにとっては言われるまでもないといいますか…知ってます、みたいな(笑)

ただ、これらの実験を通して面白いなと思ったことは、いずれの実験についても「その個体や環境によるだろうが」とことわりが入っていることです。

ひととおり実験の結果としては出たわけですが、まだまだランダムな変数は残されているわけですので、アングラーの妄想的な仮説がいっぱいあってもいいと思います。

そして私もいち釣り人として、これらの実験結果は本当は嘘であってほしいと思います。

だって、自分にとっては釣れたのはいい思い出ですが、バスにはすぐ忘れてほしいですもんね(笑)

皆さんはどう思われましたでしょうか。

それではまた。

毎度ありがとうございます!